Story
*** Soldumシードコインキーケースが出来上がるまで ***
当時オーダーで財布やバッグなどを作製している中、財布用の素材として、新しく採用した革の経年変化を調べるにあたって、『実際に自分が使ってみないとわからない』と思い、身近な物ということで鍵周りに注目しました。
鍵は毎日使うので、普段使っているキーホルダーと一緒にぶら下げられるもので何かちょうど良いアイデアはないかと考え『あるインスピレーション』が浮かびました。
デザインも型紙も作らずフリーハンドで革を“三日月形”に裁断し、縫い合わせ、5円玉を入れました。
これがシードコインキーケースの始まりです。
『あるインスピレーション』というのは、縁起担ぎとして自分が大事にしていた『種銭』をいつも身につけることができる、『カタチ』でした。
しかし、このとき私はこれを商品化しようとは全く考えてませんでした。
ある時先輩と食事に行く事になり、何気なくテーブルの上にキーホルダーを置くと、先輩が即座にそれに反応しました。
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『それ何?お金入ってるの?』
小銭とは言えど『現金』が露出した状態で鍵と一緒にぶらさがっている様が珍しく感じたのでしょう。
「これは種銭入れです。新しく仕入れた革の変化具合を調べる為に作ったんですが、果実をかじって種が見えてるとこをコインで表現して、“種と種銭” をカケたんです」
『それ商品として売ってるの?』
「いや出してませんね。考えてもいませんでした」
『それ売れると思うよ。私欲しいもん』
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本人としては思ってもみない言葉でしたが、この一言でシードコインケースが一つの製品として芽を出すきっかけとなりました。
”確かに、これは縁起が良いものを入れられるし、毎日持ち歩ける。気に入ってくれる人がもっと沢山いるかもしれない”
そう思い、商品化してみることにしました。
商品化にあたり、改めてデザインから始め、革を月形にくり抜く工具を自作し、デザインバランス、フォルム、サイズ感、使用感、金具素材等をいくつかのパターンで作製し、試作品作りに没頭しました。
そうして出来上がったものが現在の『シードコインケース』のデザインです。
出来上がったものを友人や先輩など数人にアンケートも兼ねて配ると、口コミで少しづつ広がり、数日後に注文がパラパラと入り始めました。
それから数ヶ月後、注文が多すぎて普段のオーダー財布等に手をつけられなくなるまでになり、『お世話になっている人にプレゼントするから』と1人がまとめて10個注文してくるというような事も起き始めました。
まさに、soldumのコンセプトのように、種が芽を出し、百の花を咲かせて、やがて美味しい味わいの実がなり、収穫する・・・。
『種』は果物の種であろうと、花の種であろうと、見た目は小さく、無機質で素朴な印象です。
それ自体は道端に転がっていても、何の種なのかわかりませんし、又知ろうとする事もなく、特別に意識もしません。
しかし、必要な養分を与えらると、たちまち芽を出し、あるべき姿に “変化” をします。
『この花なんの花かな?キレイだね』
と、私たちはしばしばそれに意識を向けます。
それはまるで、そうなる事を待っていたかのように、こちらに注意を引くほどの力強い意識をもっています。
『想い』も最初は種と同じように殻を破るのにくすぶってしまう事もあるかもしれません。
しかし、想いに栄養を与えつづければ必ず芽を出し花を咲かせます。
シードコインキーケースは、あなたの想いを忘れさせないよう、育てるための『知性』です。
そして、このシードコインケースをあなたの『想い』を育むためにお役立て頂ければ幸いにおもいます。
Soldum YUUKI